
それでは、インテリアの原点とは何か?
業界の端くれに身を置く私ですが・・・情けないかな、行き詰まる境地にすら、まだ達していないのが、現状であります。
それでも、ひょっとしたらインテリアの原点とは、こんな情景では無いのかな?と思わせる「歌」があります。
それは、おそらく戦後の名曲ベスト10の中には必ず名を連ねるであろう・・・そして、40代後半以上の、昭和を駆け巡った大人の約8割は、歌詞カード無しでも必ず歌えるであろう、あの名曲「神田川」である。
作詞、喜多条忠 作曲、南こうせつ 歌、かぐや姫・・・もはや、細かい解説など不要でしょう。
まず・・・その名曲「神田川」の情景を辿ってみると・・・。
愛し合っている若い二人が、神田川沿いの、三畳一間の小さな下宿に住み始めるのである。
今では、あまり聞かなくなってしまった「清貧」という言葉が相応しい、貧しくも、ささやかで、楽しい日々であっったに違いない。
もちろん部屋には浴室などは、あるはずも無く、夜ともなると、二人で赤い手ぬぐいをマフラーにして横丁の風呂屋に出かけて行くのである・・・。
そして、二人の部屋は裸電球まぶしくて(このくだりは神田川の後、レコード会社が二匹目のドジョウを狙って出した「あかちょうちん」という歌の歌詞ですが)きっと壁にはインテリアと呼べる装飾品など一切無かったのだと思います・・・なにせ清貧ですから。
それでも・・・たとえば、部屋に何気なく干してあった、赤い手ぬぐいも、二人にとっては横丁の風呂屋に出かける時間を思い起こさせる、楽しいインテリアであったに違いないと思うのです。
そして、壁にセロハンテープか何かで無造作に貼られた、二十四色のクレパスで書かれた、貴方が書いた、彼女の、ちっとも似てない似顔絵も・・・。
若い、清貧の二人には、赤い手ぬぐいもヨーロッパ製の伝統あるタペストリーであり、ちっとも似てない似顔絵も、ダ・ヴィンチのモナリザであったに違いない。
こうやって、あの昭和の名曲「神田川」の情景を想い巡らせて行くと、インテリアの原点が、うっすらと見えて来る様な気がするのである(あくまでも・・・うっすらと見えて来る様な気がするのであり、私的かつ勝手な解釈で辿り着いた境地ですので、業界の重鎮の皆様、お許しください)。
そして、この名曲には、あまりにも有名すぎる最後のフレーズが残されています。
『若かったあの頃 何も恐くなかった ただ貴方の優しさが、怖かった』
この、貴方の優しさの本当の意味には諸説あるのですが・・・。
素晴らしいクライアントやスタッフに恵まれて楽しく素晴らしい仕事ができる毎日・・・
それでも、人間は、あの名曲「神田川」の貴方の様に、何かしらの恐さに怯える気持ちを秘めていた方が良い様な気がするのであります・・・。
もうすぐ、名曲「神田川」が似合う季節がやって来ます・・・。